別府の街には湯煙が似合う。別府の風は、白い。街のあちらこちらから湯気が立ちのぼり、緑の山に沿うように棚引き風と同化する。そして、いつしか海へと消えて行く。
鉄輪温泉の「ひょうたん温泉」を訪れると、湯屋の裏側に白い湯気が塊になっているところがあった。目を凝らすとその中に、七夕の笹の葉飾りを逆さにしたような櫓が見えた。白い煙を抱えたままの湯が、短冊のように竹の枝にぶら下がり、五月雨が地面を打つような軽快な調べが響きつづけていた。
別府温泉を訪れる客は、本物の温泉を知っている人が多い。来訪者に本物の湯を味わってもらおうという願いから、熱すぎる源泉を水で薄めず、しかも短時間で、人肌に優しい新鮮な温泉を作りだしたのだ。
別府温泉の願いを込め、天恵の湯を竹に託したのが、「湯雨竹」である。湯雨竹からは、絶えることなく湯煙が上がっている。いつまでも変わらないでいて欲しい湯景色である。 |